1クールで終わるアニメって、実はもう終わりに向かって物語を畳みはじめる時期なんですよね。今期からアニメを数本見ていますが、その多くが「そろそろ話を少しずつ片付け始めようね」というムーブを見せており、やっぱそういうものなんだなとひとり納得している次第です。
こうやって毎週ちゃんと追いかけて1クールアニメ見るの実質初めてみたいなモンですから、まだまだ勉強中です。
というわけで、この作品のホメカツを。
アニメ『がっこうぐらし!』
第7話『おてがみ』
2015年、海法紀光、千葉サドル原作のアニメーションです。アニメーション制作Lerche。
前回までで「過去編」とも言えるエピソード群がひと段落した「がっこうぐらし!」。
今回からは新しい話が始まるわけですが、やっぱり気になるのは、何をもってこの物語は最終回を迎えるのか? ってことです。
たとえばラスボスが明確にいるようなバトルアニメなら、目指す場所が分かりやすいですよね。ラスボスやっつけりゃいいわけですから、そこに向かって全力疾走すればいい。
でもこれ、一応「日常系」じゃないですか。ゾンビを生み出す元凶のキングゾンビーがいるならソイツをやっつけりゃいいかもしれませんが、明らかにそういう感じの物語じゃないですよね。じゃあ、どうやって終わらせるつもりなのよ? と。
その方向性が、今話あたりから見えることを期待しちゃいますね。では早速内容を見てみましょう。
季節は秋、そろそろ卒業について考える頃。学園生活部は、今日も楽しい日常を送っています。
でもその生活には、少しずつ変化の影が迫っていました。明らかに増えているゾンビ。記憶の整合性を保てないゆき。減っていく食料……あらゆる状況が、いつか来る終わりを示唆しています。
そんな中、めぐねえが残したと思われる「レターセット」が発見されました。これを見たゆきは、大喜びである提案をします。それは、「手紙を書いて外に出そう」というもの。
それに賛同した部員達は、早速手紙を出す準備に取り掛かりますが……。
う〜ん。なるほど。今回はですね、「変化」の回でしたね。
より正確に言うと、「この生活には、いつか終わりが来る」「この先、私たちはどうしよう?」そういったことを学園生活部の面々が改めて考える、そういった回であったと思います。
物語はその随所で、ゆき達に変化を強いていきます。
まず、冒頭のゆきの朗読。「行く川の流れは絶えずして〜」これ自体が、非常に象徴的です。同じところにとどまっているものはない。ゆき達もそうでなければならないということを暗に示す演出です。
様々な状況も、学園生活部の面々に「このままではいけない」と思わせます。
外のゾンビが、明らかに増えている。バリケードはいつまで持つでしょうか。夜風が段々冷たくなってきており、寒さの季節の訪れを示唆している。いつまで凍えずに過ごすことができるのでしょうか。
印象的なのは、ゆきが目覚めてから一連のシーン。あれは第1話の再現ですね。パスタと同じ麺類であるうどんを食し、みーくんは「おいしい」と仏の顔をし、ゆきは犬のようにがっつく。
それでも、状況が少し違います。おかわりを用意できる状況にないことが明確に描かれる。そしてゆきの混乱。みーくんがゆきのめぐねえ妄想に微妙にノリきれないのは第1話と一緒ですが、それが場に動揺をもたらす。
ゆきの表層意識も、少しずつ自分の記憶がおかしいことを悟りつつあります。ゆきの妄想に付き合うことにしていた学園生活部の面々も、本当にそれでいいのか、改めて考えなければならない局面に来ています。ゆきに語り掛ける幻想めぐねえも、幻想の世界に留まるのでなく、過去を思い出に変えていくよう諭す。そして何より、我々にも遂にめぐねえが見えなくなってしまった。
誰もそのままでは居られません。視聴者ですらも。第1話と同じ日常は、永遠に続かないのです。
学園生活部の面々が、OPで言うようにいつまでも「友達でいられる」かどうかも、若干不安にさせられます。
犬の逸話のシーンがそうですね。犬は世界を人間が見るようには認識できないけれど、人間に見えないものを感じ取ることができる。くるみはそれを現在のゆきと重ね合わせて言います。まさにゆきはこの逸話における「犬」でしょう。くるみ達のように世界を認識することはできないが、自分達が気付けないような楽しいことを見つけてくることができる。
でも、私達だって、同じものが見えているわけじゃない。りーさんはそう言います。
それはきっと、ゆきの今後に関することでしょう。先週までも散々考察した通りで、りーさんは誰よりゆきの狂気に依存しています。みーくんは最初から「このままじゃいけない」派ですし、くるみもまたそちら側に意見が傾きつつある。
ふたりは精神的にある程度自立した上でゆきに癒されていますから、ゆきが快方に向かえばそれは単純に喜ばしい。でも、依存心の強いりーさんは? 気持ちの面でふたりに置いて行かれて、ゆきが少しずつ前に進み始めたら、彼女はどうしたらいいのでしょう?
一番変化が求められているのは、実は彼女なのかもしれません。変化の必要に迫られた時、彼女は自分が変わる道を選ぶのでしょうか、それとも……。
でも、「この先どうする?」と考えることは、悪いことばっかりじゃありません。
未来について考えられるということは、考えるべき未来が存在するということ。未来について考えられることは、希望なのです。
進学と就職とか、卒業とか。この世界でそんなことについて考えるのが、どれほど意味を持つのか。先週までならそっちの気持ちの方が視聴者的にも強かったでしょう。
しかし今話を見て、一見空しくも見えるその思考が、とても尊いものに見えた視聴者の方も少なくないはずです。私はそうでした。将来の夢を書いて飛ばしたゆき。けいへの思いを綴って飛ばしたみーくん。全員分の内容は分かりませんが、その内容には「希望」があるんですよね。
手紙というのは、ゆきが冒頭で言っていたように、人の思いを形にし、過去から未来へ繋ぐモノです。きっと誰かに届いて、その内容が読まれると信じて送り出されるモノです。手紙を出すという行為自体が、きっと受け取られ内容を読まれるという「希望」が無い限り行われない行為なんですよ。
手紙が届くのかと疑問に思う現実派のみーくんに対し、くるみはあっさりと「届くと思う」と答えます。あのシーンは非常にいいですね。自らに言い聞かせるようにとか、そういう感じじゃない。心の底から、当たり前のこととして信じている言い方です。その後のみーくんとのやりとりといい、あの中で一番心をしっかり持った大人なのは、くるみなのかもしれませんね。
希望の象徴である手紙に、希望を記して飛ばす。たとえ飛んでいく先が、どれだけ地獄のような場所であっても、届くわけないと諦めずに。まさに「ここには夢がちゃんとある」。あのOPも案外皮肉ばかりでなくて、物語の本質を捉えてるのかもわかりません。
第2話で「いつか助けが来る」と言っていたのが、今話では「いつか外に出られる」になっていたのも注目ポイントでしょう。
そう、こういう非常時じゃなくたって、学校は「いつまでもいる場所」じゃない。「いつか出て行く場所」なんです。高校を卒業して、夢に向かって歩き出す。このバリケードを出て、希望に向かって走り出す。外に出る、飛び出すという行為には、前へ進む大きなエネルギーがある。
2話の「いつか助けが」は、とても助けが来るようには見えない、虚しく響くばかりの言葉だった。でも、今話の「いつか外に」は、なんだかいつか本当に出られそうな気がしませんか。彼女らが自分でそう言えるようになったのは、彼女らが前向きな「変化」によるものだと、そう思います。
おお、見えてきましたね、この物語がどこを目指していくのか。即ち、卒業。つまり、この学校で永遠に暮らすことじゃなくて、ここから出て行くこと。希望を持って。夢に向かって。
問題なのは、素直にそれをさせてもらえるかどうかです。
ゆきは、今話の冒頭で定義しました。今ここではない未来にいる誰かへ伝えるものが、手紙。だとすれば、めぐねえの遺した鍵は、まさしくここで言う『手紙』そのものだと言えましょう。
お気付きの方もいらっしゃるかもしれません。今回学園生活部の面々は、「普通の学校にこんなものない」と、この学校の設備の特殊性に改めて触れていました。考えれば奇妙なことは沢山あります。太陽光発電。その電気を溜めておく設備。未だにシャワーを浴びられるほど異常なく使える水道。洗濯用洗剤等、明らかに高校で売る必要のないものまで置いている売店。
改めてここに触れたということは、「我々はこれについてある種の回答を用意しています」という宣言でしょう。そう、アニメスタッフは『この世界の秘密を我々に明かしていく気がある』。そう理解できます。
その前提を基にあの鍵を見てみてください。明らかにこの物語の根幹に関わる謎を秘めてるでしょ。『進撃の巨人』でいうグリシャの鍵くらい謎のこもった鍵でしょ。そしてこの物語の根幹って、明らかにロクでもないことでしょ。それを明らかにしていくってんですよ、ロクなことにならないでしょ。
少女達の希望とは別の場所で、明らかに強大な悪意が蠢いてるんですよ。彼女らはただ、これからも生きていける希望があればそれでいいっていうのに、スタッフの皆さんはわざわざソイツとご対面させようってんですよ。それだけならまだいいですよ、「この悪意を退けない限り君らの希望は無いよ」とすら言い出しかねない雰囲気ありますよ。JKになんて過酷な運命背負わせようってんですか。カァーッ! これだけ希望を演出しておきながら、視聴者を奈落の底へ叩き落とす準備かもしれないと思うと、まったく安心して見れませんよ! もう!
さぁ、果たしてこの謎は、学園生活部の希望を無残に刈り尽くすのか。
それとも、どんな大きな絶望が襲い来ようとも、学園生活部は夢と希望を保てるのか。
今後の展開に注目です。
それでは、次回のホメカツをお楽しみに!
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