2015年07月14日

映画『ある優しき殺人者の記録』をホメる!

どうも、黒道です。
一昨晩どうやら大分で地震があったようなのですが、福岡住まいの私はまったく気付かず眠りこけていました。私が住んでる地域は別に震度五強じゃないからいいんですが、突然夜中にガチな感じの地震来たらちゃんと逃げられるのか心配です。寝てる間に脱出不能になってたらヤバいですよね。

さて、今回は久々に(?)ですね、白石晃士監督の作品をホメカツしていきたいと思うわけですよ。

映画『ある優しき殺人者の記録』



2014年、白石晃士監督作品。日本・韓国制作のサスペンス・スリラー映画です。

白石監督の作品は、当ブログでも何度もホメカツしてきました。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズ、そして『カルト』『オカルト』という具合で。今コワすぎ! シリーズの新章『超コワすぎ!』もあってるし劇場で見たいんですが、金に余裕のない福岡住まいの私は上映してる劇場までなかなか行けませんで、歯がゆい思いです。

で、これはそんな白石監督が、自分の得意技を全部ぶち込みましたみたいな、白石晃士作品のひとつの到達点感すらある作品であります。早速その内容を紹介していきたいと思います。
今回はネタバレ多めです。語りたい部分が結構本筋にガッツリ絡むので。ご注意ください。

物語の舞台は韓国。
ジャーナリストの女性ソヨンと、その知人で怪奇現象を追う日本のカメラマンである田代はある日、廃屋となったマンションへ向かうことになります。なんか聞いたことのある感じの人だぞ田代さん。なおお互い日本語も韓国語も話せるので、意思の疎通は問題ありません。

で、この二人がどうして廃屋になんか行かなきゃならんのかって話ですが、これはソヨンがとある人物に呼び出されたからなんですね。
その人物の名はサンジュン。ソヨンの幼馴染であり……18人もの人を殺した殺人者。ちょっと殺した人数が半端ではないですね。
しかも元々彼は10歳の頃障害者施設に入れられていたんです。で、17年後である現代においてそこを脱走し、その上でこれらの殺人事件を起こしてるんですね。障害者施設を脱走した連続殺人犯って、日本だとなかなかその、倫理的に大丈夫なのかなとかどっかの団体から怒られたりしないのかなって心配しちゃうんですけど、余計な心配でしょうそれは。

これだけの大事件を起こしながら、未だ逮捕されていないサンジュン。ところがそのサンジュンが、突如としてソヨンに連絡をとってきた。君と、日本人のカメラマンをひとりだけ連れて、自分の指定する場所に来てほしい。そして、自分を独占取材してくれ、と。
当然戸惑うソヨンですが、言われた通りに田代を連れ、指定された場所を訪れます。そここそがこの廃屋マンション。指定された一室へと向かった二人は、その場でサンジュンに閉じ込められてしまいます。この古ぼけた密室にいるのは、サンジュン、ソヨン、田代の三人だけ。

カメラを止めれば殺す。肉切り包丁を持ったサンジュンはそう言って脅しながら、今日こうして二人を呼び出した理由について説明し始めます。
そもそものきっかけは、十七年前に遡ります。サンジュンとソヨンには、共通の幼馴染がいました。少女の名はユンジン。三人はいつも一緒に遊んでいました。ところが彼女は、暴走カーにはねられ死亡してしまうのです。その死を間近で見たショックにより心を壊したサンジュンは、言動が常人のそれではなくなり、間もなく障害者施設に入れられた。そのはずでした。
自分はおかしくなったわけではない。そうサンジュンは言います。ユンジンが死して後、サンジュンには奇妙な声が聞こえていたのです。
「27歳の年に、27人を殺せば、ユンジンとお前の殺した人間すべてが生き返る」
サンジュンが大きくなるにつれ、その声はどんどん具体化していきます。施設からの脱走方法を教えてくれたのもソイツ、次に誰を殺せばいいのか教えてくれたのもソイツ……。
本当は人を殺したくなんてない。でもユンジンを生き返らせるために仕方なくやっている。世間では18人なんて言われてるみたいだけど、もう25人殺してしまった。だから、二人に自分の「最後の殺人」を記録してもらいたい。そして、『奇跡』が起こる瞬間を、ユンジンと今まで殺した人が復活する瞬間をカメラに収め、ドキュメンタリー映画として世間に公表してほしい。そうしてこそ、自分が狂人ではないことが証明される。それがサンジュンの望みでした。
……いや、どう聞いてもまともな精神状態じゃありません。狂人じゃないと言えば言うほど狂人としか思えなくなってきます。仮に声が本当に聞こえていたとして、嫌だ嫌だと言いつつ十七年前の事件を忘れず二十五人もの人を殺せる人間がまともだとは到底考えられない。
しかも、今回の計画はソヨンの書いた記事からインスピレーションを得たっていうんですよ。逃亡生活を送っていたサンジュンは、ソヨンがこの件と全く関係ない記事を書いてる雑誌を偶然拾った。その記事を縦読みすると、今日この時間に二人をこの場へ呼ばなければならないというメッセージが出てくる! っていうんですね。
「そんなの偶然よ!」と必死で言うソヨン。そりゃそうだ。自分の書いた記事をそんな風に使われちゃたまりません。だけどサンジュンも「こんな偶然あるか、メッセージで間違いない」と譲らない。確かに偶然にしちゃ出来過ぎている気はしないでもない。議論は延々と平行線のまま、サンジュンはいよいよ最後の殺人の準備に取り掛かります。

ソヨンの書いた記事を縦読みすると、今日の指定された時間、この場に日本人のカップルが来るはず。声によれば、犠牲者となる最後の二人には「愛」が必要。それとこの記事の内容を交互に確認すれば、最早何をすべきかは明白。今日ここに来るであろう日本人カップルの愛を確かめ、殺す。そして、奇跡を起こすための最後の礎とする。
なんとか彼を止めようとするソヨンと田代。しかし、その時が訪れてしまいます。部屋の外から、この廃屋マンションを訪れている新婚カップルの声。どうしてこんなところに。それもまた声の導きだというのか。サンジュンは二人を部屋に誘い込み、閉じ込めてしまいます……。

果たして、すべては偶然なのか、それとも本当の奇跡なのか?
サンジュンの、ソヨンの、田代の、日本人カップルの……そして、ユンジンの運命は?



といった具合の物語なのですが。この映画ね、冒頭で申し上げた通り、白石監督の得意技詰め合わせなんですよ。

そもそもこの映画自体、白石監督が得意とするPOVモキュメンタリー作品なんですが、それがホント徹底してるんですよ。
なんてったって、80分以上ある上映時間の間、ずっとカメラ回りっぱなし。「コワすぎ! File-04」の中盤以降みたいに、ワンカットで最後まで突っ走っていくんです。最初から最後までですよ?
いや無論映像の映像のマジックなんですけどね。途中でうまいこと切って繋いでるんですよ。でもそうだと思って注意してなかったら最初から最後までカット無しに見えますよ。そういう手法を磨いてきた白石監督ならではだと思います。実際ドコで切れてたんですかねアレ? 詳しい方教えてください。

そして語らなきゃならないのは、やはり監督得意分野のひとつ、暴力!
いやいや暴力ぐらい振るうだろ映画なんだし、ってお思いかもしれませんが。白石監督の暴力描写ってのはこう、全然爽快感がないんですよね。これホメてますよ、嫌な暴力なんですよ。見ててスカッとする暴力じゃなくて、不愉快になるタイプの暴力なんですよね。
映画とかってやっぱり、鑑賞者の心を何らかの形で動かしたいと思って作ると思うんですね。興奮とか感動という形で動かそうとする人もいる。ホラー映画なら、恐怖、驚愕とかいう形で動かそうとする。そうやって普段の生活ではなかなか体験できない非日常を提供するのがエンターテインメントの役割だろうと思うわけです。
で、白石監督が暴力描写によって観客の心をどう動かしてるかっていうと、とにかく嫌な気持ち、不愉快にさせてるんですよ。そう、こういう心の動かし方もあるんですよね。客の心を動かすのがエンターテインメントの仕事だとしたら、もうこりゃ大成功してますよ。消えない興奮、消えない感動を作るように、消えない不快感、消えない心の傷を作る。

この映画における暴力描写の立役者といえば、やはり日本人カップルですね。そう、サンジュンじゃないんですよ。
いやね、サンジュンもなかなかキツいんですよ? 「俺はまともだ」言い続けながら包丁振り回す明らかな精神不安定者ですからね。でも、この日本人カップル、凌太とツカサは彼が霞むくらい強烈なキャラをしてます。
いいですか、これからやって来る日本人カップルの「愛を確かめなきゃ」いけないんですよサンジュンは。っていうことは、当然深く愛し合ってる男女が来なきゃいけないじゃないですか。彼が「カップルを殺さなきゃ」思って最初に捕まえたカップルはお互い自分が助かることばかり考えてダメだった。極限状態でもお互いがお互いを想い合うカップルでなければ、と。
どんなカップルの登場を想像します? 皆さんなら。あんまりチャラそうなのだとすぐお互いを裏切りそうだし、誠実で善良そうないかにも一般人って感じの二人が来るのかな……とか思うじゃないですか。
全然違うんですよ、もう、メチャクチャ悪そうな人が来るんですよ。凌太、明らかに道端ですれ違う時に肩とかぶつけたらいけないタイプの人間ですし。見てるだけで「何ガンたれてんだテメェ」言ってきそうですし。ハッキリ申し上げて、サンジュンコイツに2,3発ブン殴られたら逆に負けるんじゃないのってレベルの悪そうな奴なんです。

それでも二人の愛を確かめないと。不意打ちにと拘束によってカップルの動きを封じたサンジュンは、凌太に言います。「自分で首を吊って死なないと、この女をレイプする」と。わぁ大変だ、私が大の苦手とするレイプ描写だ。私ラブラブ和姦じゃないと抜けないって巷では有名なんですよ。なんなんだ巷って。
普通だったらここで「ヤメロー! ヤメロー!」ってなるじゃないですか。彼女を犯されたくはない、でも自分が死ぬのは……って。でも違うんですよ。ここからが白石監督の悪趣味さが発揮されるトコでして……ここらへんの描写の為に、AV女優の葵つかささんをキャスティングしたんでしょうね……ええ……。

まずもって、凌太は拘束されてもサンジュンに対して精神的優位を保ち続けてるんですね。まあ凌太は見るからに悪そうだし、喧嘩慣れしてそうだし、なんならひとりくらい殺したことありそうですし。オドオドした精神異常者がいくら包丁振り回しても怖くもなんともない。
それどころか挑発していくんです。「やれるもんならやってみろよ。お前こんな人に見られながらチンポ勃つのかよ?」みたいな感じで。もちろんサンジュンは大困惑。えっ、愛を確かめるはずなのにレイプに対してやってみろだと!? 何考えてんだコイツ!? ホントにやるぞ!? と。

しかしここからの描写が個人的には更にキツい。サンジュンにレイプは無理なんです、本質的に。まずコイツ、10歳で施設に入れられて、それから今まで17年間ずーっと閉じ込められてたわけです。つまりその……童貞なんですよ。施設の中でロクな性知識なんて得られなかったでしょうから、レイプが酷いコトだということは分かってるけど、そもそもその前提となるセックスというものに対する知識もないし、具体的なイメージが全然湧いていない。
「お前、自分の女にこんなに酷いコトされていいのか!?」言いながら、サンジュン、一生懸命ツカサのおっぱい揉むんですよね。もう、ホントに童貞をこじらせてるんです。女を脱がせても何していいのかよく分かんないから一生懸命おっぱい揉んでるんですよ。それしかできないんですよ。そんで「どうだ酷いだろう」って脅そうとしてるんです。
ツカサと週8くらいでセックスしてそうな凌太からしたら失笑モノですよねこんなの。いささかも精神的優位が崩れない。それどころか「お前がツカサをレイプできたら首吊ってやるよ」とまで言い出します。サンジュン、いくら肉切り包丁振り回そうが拘束しようが負けてるんですよ完全に男として

それでも頑張ってね、サンジュンはレイプに移行するんです。ツカサの下を脱がせてね、自分もパンツ脱いでね。こういう状況でもなんだかんだおっぱい揉んだらチンポがギンギンになってるサンジュン、頑張ってツカサに己のブツを挿入しようとします。
でもハイ、皆さん想像できましたでしょうか。挿れる場所が分からないんですよ。ウオオ、挿入場所が分からずモタモタするレイプ犯とかこんな情けない存在ありますか。凌太も笑いながら挑発します、「お前挿れる場所分かんねえのか? 教えてやろうか? なぁ?」って。
そしてなんとか挿入場所が分かってぶち込むサンジュンですが、なんと数ピストンで射精してしまう。超・早漏人間。おお、もう、レイプする側なのにすべてが哀れですよね……。

で、これで終わりだと思うじゃないですか。もうサンジュン充分頑張ったよお疲れ様と思うじゃないですか。これ以上恥の上塗りはやめろと思うじゃないですか。このレイプ描写には更に続きがあるんですよ。
なんと実はツカサ、「拘束された状態でダンナの凌太に見られながらレイプされる」という特殊な性的願望の持ち主だったんですよね。せっかくレイプしたのに、それがまったく彼女にとって心の傷になっていない。それどころか、前々から夢だったシチュエーションが実現して股間はビショビショなんですよ。凌太も「夢が叶ってツカサも幸せだよ」と喜んでいる。誰も困ってないんですよツカサがレイプされたのに被害者側が。
それどころか傷が深刻なのは加害者側なんですよ。目の前で幼馴染が女をレイプするところを目撃したソヨンと、それで軽蔑されたサンジュンだけ。これ、何のためのレイプだったのホントにって感じですよ。
それどころか、拘束を脱した凌太とツカサ、その場でセックスし始めますからね。ツカサをアンアン喘がせながら、レイプされて濡れまくった股間にバックからぶち込みまくってるんですよ。そしてこの間に殺せばいいじゃないですかサンジュン、それもできないんですよ。ただただ二人がセックスしてるところを黙って見てることしかできないんです。おお、おお……もう……。

ホント悪趣味でしょう?
この一連の描写は、そのままサンジュンの殺人に対する立場にも繋がるんですよね。サンジュンは、ホントのホントに、犯罪者になれる精神的素養が無いんです。
多分「俺は殺したくないんだ」の発言はマジなんですね。もっと悪い奴は世の中にいっぱいいるし、自分はそういう精神構造にできてない。なのに、全部無理してやってんですよ、10歳の頃に死んだ幼馴染のために。童貞を究極にこじらせたが故の犯行とでも言えばいいのか。超・童貞人間デラックスですよ。それをレイプ描写によって描き出すというのが更に趣味が悪い。
白石監督、この辺の描写が本当にすごいですね。『オカルト』でもそうでした。狂人がどれほど切実な思いで犯罪に走っているか、異常者の中にどれほど整然とした理屈があるか。そういったことを観客に伝える、謎の説得力があるんですよ。共感可能性ゼロのキチガイ犯罪者に、同情の余地があるかのように感じさせてしまう。これは手腕ですね。



そしてやっぱり考えてしまうのは、結末についてなんですが。
あ、ここからはガチで結末の話しちゃうので、お気を付けください。
一旦ここで区切りますので。白石監督の得意技が惜しみなく発揮されたこの作品、白石監督ファンなら見るしかない。ラストシーン周りの伏線回収とか、思わず胸が熱くなっちゃうところがあります。少年漫画みたいな伏線回収もまた、監督の得意技のひとつですもんね。
かなり賛否は分かれるでしょうから、ある程度の覚悟だけは持って挑んでください。



それでは、次回のホメカツをお楽しみに!

ブログランキング参加してます。是非クリックをお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

↓monacoinによる投げ銭メント行為はいつでも大歓迎です。
monacoin:MUfy2FARJdmkzP4KB69GYqbUqKhrgSDTSr




さて……。
白石作品にしばしば登場する人智を超えた存在、通称『霊体ミミズ』いるじゃないですか。
今作でもラストでガツッと登場するんですよね。つまり、サンジュンは本当に神の声を聴いていたし、27人を殺したサンジュンに、神は応えた形になる。
これをもってハッピーエンド、よかったなぁとなるかっていうと……正直ちょっと素直にそう思って笑えないトコありますよね。

だって考えてもみてください、あの霊体ミミズが、わざわざ10歳の時死んだサンジュンの幼馴染を助けるために啓示を下したと思います? おお、幼馴染が死んじゃったの。そりゃ可哀想だね、私の試練を乗り越えたら助けてあげようね、って? まさか。

白石監督ファンの方なら分かると思うんですが、『オカルト』と明らかに構造が一緒でしょう、倫理のねじがどっか外れてる社会的弱者に対して、神が啓示を下す。言ってることまで一緒です。人を大量に殺せば自分は望み通りの世界へ行け、殺した人も生き返るんだよ、と。
サンジュンに啓示を下した神と、『オカルト』で江野君に啓示を下した神、明らかに同一存在だと思うんですよね。ビジュアル的にも手口的にも。

ラストシーン見ても分かる通り、邪神は嘘ついてはいないんですよね。サンジュンの行動のおかげでユンジンは助かった。それによって「優しき殺人者」としてのサンジュンはこの世に存在しなかったことになり、すると彼に殺された人なんてのは発生しないわけだから、殺された人も実質生き返ったようなモン。まあ理屈は分かる。
でもそうしますと、やっぱりこのテの作品につきものである『タイムパラドックス問題』が起きるじゃないですか。サンジュンは幼馴染が死んだから過去に戻り、ユンジンを救った。それによってサンジュンは幼馴染を失わずに済んだが、幼馴染が死ななかったらサンジュンは過去へ戻らない。すると、ユンジンは救われないから結局死ぬことになり、そうするとサンジュンは過去へ……ってヤツですよね。
この問題に関しては、白石監督が他作品でひとつ答えを出しています。即ちパラレルワールド説。この世界はひとつではなく、いくつも存在しているっていう考え方ですね。白石監督の某作品にも、友人に返せなかった恩を返すため、別の並行世界に飛び、そこで暮らしてる友人(当然初対面)を助けるっていうキャラが登場してます。
サンジュンは、あの邪神によってパラレルワールドに飛ばされた。サンジュンが救ったのは、パラレルワールドの自分である。そう考えればパラドックスも起こらない。ひと安心です。

……ん? 意味なくね?
だって考えてみてくださいよ。結局、『サンジュンが救いたかった』『自分の目の前で死んだ』ユンジンは生き返ってないじゃないですか。『サンジュンが殺した』サンジュンの犠牲者は生き返ってないじゃないですか。そして何より、『優しき殺人者』サンジュンは、殺人犯&レイプ犯になってまで望んでいたユンジンとの未来を享受できてないじゃないですか。
というより、あの元の世界がどうなったか考えると、最高に恐ろしい気持ちになりませんか? 描写されていないのでハッキリしたことは言えませんよ。でも、突如天から巨大霊体ミミズが降りてきてるんですよ。あの後、あの世界どうなったと思います……?

この物語、『邪神が人間の願いを叶えてくれた』のではなく、実は『邪神が自分の目的の為に人間を利用した』物語なんじゃ? というのが私の見方です。
実はあの『霊体ミミズ』、様々な並行世界を破壊し、喰らいながら生きているのでは? その為に、様々な並行世界で、様々な人間に啓示を与えながら、そのうちどれかがヒットすればいいな〜的な気持ちで待ち構えているのでは? サンジュンを救ったように見えたのも「おお、この世界にいくつか仕掛けてたエサがヒットしたな! おかげで顕現できるわ。ありがと、今日は気分もいいしとりあえずお前のコト別世界に飛ばしとくわ、あとは適当に頑張れよ。お前の望みとか知らんが。ヨッシャ、顕現できたし、この世界を喰らい尽くすぞ〜」程度のノリだったのでは?

『優しき殺人者』サンジュンはあれほど頑張ったのに、結局邪神の掌の上で踊らされ、その命を落とした。
救われた方の別世界サンジュン達なんて、たまたま通りかかった兄ちゃんが命を救ってくれたってだけじゃないですか。ユンジンだって「自分が生きてるのはサンジュンが頑張ったおかげなんだよなぁ」なんて露ほども思っていないし、サンジュン本人も「僕が頑張ったから今の幸せがあるんだよなぁ」なんて思ってない。まず自分が何かしたわけじゃないですしね。
では、『優しき殺人者』サンジュンの頑張りは、誰が認めてくれるのでしょう? 「奇跡は存在するし、自分はキチガイではないと証明したい」その思いから頑張った『優しき殺人者』サンジュンの思いや願いを、誰が証明してくれるというのでしょう? 唯一の証拠であるカメラは捨て置かれ、別世界サンジュン達は笑いながら映画を見に行く……。

これ、実はとんでもないバッドエンドじゃないですか?
『優しき殺人者』サンジュンに、あまりにも救いがない。上手いコトベタベタなハッピーエンドに見せかけてますけど、全然そうじゃないじゃないですか。邪神には騙されていた。大切な人も、自分が殺した人も、生き返ってなんていない。自分の生きていた世界は滅んでしまった(かもしれない)。そして、自分がキチガイではないことは誰も証明してくれない。サンジュン本人ですらも……。
エンドロールの楽しそうなクリスマスの描写、私は逆に薄ら寒く感じましたね……。



まったくとんでもない人です、白石監督。
一見すれば、安っぽくも見えるハッピーエンド。でも内容について考えれば考えるほど、気付かなくてもいいところに気付いてゾッとさせられる……見事な語り口です。この作品について考察するうち、ますます監督のファンになってしまいました。これからも付いて行こうと思います。
皆さんも、別の白石監督作品で徐々に慣らしながらでいいんで、是非見てみてくださいね、この映画。監督の得意技、たくさん詰まってますから。見る人を選ぶでしょうが、私はオススメです。



それでは、次回のホメカツをお楽しみに!

ブログランキング参加してます。是非クリックをお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

↓monacoinによる投げ銭メント行為はいつでも大歓迎です。
monacoin:MUfy2FARJdmkzP4KB69GYqbUqKhrgSDTSr
posted by 黒道蟲太郎 at 08:21| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。