2015年07月08日

映画『博士の異常な愛情』をホメる!

どうも、黒道です。

マッドマックス 怒りのデス・ロード」の記事や、「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」最新話の記事、多くの方に見ていただけたようで光栄です。前者はともかくとして後者は記事の内容云々というよりナンシー=サンの痴態を見に来た方が多かったんじゃ? って感じはします。
まだホメカツできていない作品がどんどん増えています。先週から先々週にかけて映画を見すぎましたね。このままじゃ記事が追いつかなくなるので、ゆっくりでも皆さんに紹介していかねばなりません。
というわけで、リクエストいただいていたこの作品を。

映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』



1964年、イギリス・アメリカ制作。スタンリー・キューブリック監督のブラックコメディ映画です。

おお。白黒映画です。モノクロ映画ですよ。こりゃ結構時代遡っちゃったかな、行くところまで行っちゃったな? なんて思いましたけれど、別にこの頃はもう白黒映画全盛期ってわけじゃないみたいですね。キューブリック監督もモノクロ映画を撮ったのはこれが最後みたいですし。
とはいえもう50年以上前の映画ですよ。すごいですね50年って。半世紀ですよ。昔の映画であっても、DVD店に行けば簡単に借りられる。いい時代です。50年前に映像として記録されたものがほぼ変わらない形で何の努力もなしに手に入るんですよ。すごくないですか。

そうそう。キューブリック監督といえば、このブログじゃ以前『シャイニング』をホメカツしたことがありましたね。アレは相当面白い映画でした。
私キューブリック監督作品全然見たことないので申し訳ないんですが、『2001年宇宙の旅』とか『時計仕掛けのオレンジ』とか、そしてこの『博士の異常な愛情』とか、私みたいに映画に全然詳しくなくてもタイトル知ってるくらい有名じゃないですか。映画全然詳しくない私が知ってるくらいですから、やはりそこには現代に残って然るべき、普遍的な何かがあるってことですよね。

とか色々言いつつ、私基本的にどんな映画なのか先に調べないで見ちゃうタイプの人間なので、上に書いたようなコトって結構後付け感あるんですよね。実際には「キューブリック監督の作品なんだ、ふ〜ん」くらいの感覚で見始めました。その結果どのような感想を抱いたかは、続きをご覧ください。

物語の舞台は、当時における『現代』。まさに冷戦まっただ中、アメリカとソ連の核戦争が結構現実味を帯びていた時代。
アメリカ、バープルソン空軍基地の司令官、ジャック・リッパー将軍が、副官であるイギリス空軍のマンドレイク大佐に、『R作戦』の実行を命じるところから、この物語は始まります。
『R作戦』。それは、「北極海上空で待機しているB−52戦闘機で、一斉にソ連へ飛んでいきしこたま核爆弾をぶち込む」という作戦です。本来はアメリカ本国が先制攻撃された際にのみ発動される恐るべきこの作戦でぶち込まれる核爆弾は、第二次大戦で使用された全爆弾の16倍もの破壊力を持つとされます。えらいことです、それ落として大丈夫なんでしょうか、ソ連は滅ぼせても地球がヤバいのでは。

しかし、核爆弾の威力よりも更にヤバいのは、この作戦が完全に「間違った」作戦であるということです。
だって、まずアメリカ本国が攻撃されたなんて事実はないわけです。お互いに核で牽制しあってるから冷戦なわけで、コレ実際に攻撃したらえらいことなのはお互い分かってますしね。滅多なことじゃそういうコトしたりしません。
じゃあなぜこんな号令を出したのか。それは、リッパー将軍が狂人だったからです。
本来なら「本国が核攻撃を受けて指揮系統が混乱している時、現場の判断で報復できるように」と設定されたこのR作戦を、彼は「お上には戦争というものが分かっていない」と完全に現場の判断の意味を履き違えているとしか思えない理由で発令しちゃっている。
これだけでも充分おかしいんですが、異変に気付いたマンドレイク大佐がリッパー将軍に問い詰めると、更におかしなことがどんどん分かってきます。彼が『合衆国の飲用水には共産圏の陰謀により体液が汚される成分が含まれている』と信じていること。しかも「セックスした後異様な疲れと虚無感に襲われたことからこの陰謀に気付いた」と言ってること。そりゃ単なる賢者タイムでは……。
マンドレイク大佐は、この異常な考えに取り憑かれたリッパー将軍を止め、R作戦をストップさせようとします。しかしそれは、武器を持った将軍によって阻まれてしまうのです。

中止命令を出せない理由は他にもあります。命令を出そうにも、命令を受ける航空機側が、通信を受け付けないのです。
というのも、R作戦の指令を受けた乗組員たちは、その場で全ての通信機器を『CRM114』という暗号装置に接続せなければならないということになっているんですね。すると、敵国からの妨害電波や、敵による偽の命令等が届かなくなり、より確実に命令が遂行される。その代わり、当然ながら、味方からの通信も受け取れなくなってしまうんです。これ仕組みを作った人、最初に「誰かが間違いで出撃させちゃったら困るな〜」なんて考えなかったんですかね……。
いえ、正確に言えば、あるんですよなんとかする仕組みは。実は暗号化を解除するためのコードがありまして。アルファベット三文字で構成されたそれを送信すれば、ちゃんと通信することができるようになるわけです。いやぁよかった……で、そのアルファベット三文字を知ってるのは? リッパー将軍だけです! 教えてくれるわけがありません! オーウ。なんてことでしょう。

じゃあ無理矢理吐かせないと。しかしそれも難しいんですね。
なぜって、リッパー将軍、基地の全員に「これからアメリカ軍そっくりに偽装した敵が攻めてくるから全力で潰すんだぞ!」って命じてるんです。軍を派遣して基地を制圧しようとしたら、リッパー将軍の軍が全力で相手してくれるというわけ。誰も将軍の命令を疑ってないんです。ただひとり、マンドレイク大佐を除けば。そのマンドレイク大佐が銃を向けられてる状況ですからもうメチャクチャです。

何にも知らないT・J・”キング”・コング少佐ら爆撃機の乗組員たちは、「R作戦が出たってことは、きっと故郷は今頃ソ連からの攻撃で大変なことになってるんだろう。みんな家族のこととか不安だと思うけど、命令通りちゃんと核を落として帰って、祖国の役に立って昇進させてもらおうな!」と使命感に燃えています。
そんな彼らを止めるべく、アメリカ政府首脳部は大慌てでペンタゴンの戦略会議室に集まります。アメリカ大統領マーキン・マフリーをはじめとして、空軍司令のバック・タージドソン将軍、駐米ソ連大使のアレクセイ・デ・サデスキー、そして、アメリカに帰化したドイツ人科学者、ストレンジラブ博士、等々……。
「もう攻撃は止められないならいっそのことソ連とか完全に滅ぼしちゃえばいいじゃん!」とか極端な意見も飛び出し、てんやわんやのその会議の中で、更にどえらいことが発覚します。実はソ連、内緒で恐るべき新兵器を開発していたんです。それが「皆殺し」装置(ドゥームズデイ・ディヴァイス)。ソ連が核攻撃を受けたとコンピューターが判断したら、その瞬間に爆発して地球上の全生物を滅ぼすレベルの死の灰をまき散らす。ひとたび発動してしまえば、向こう100年は地球が死の星になってしまうのだといいます。しかも解体しようとしたらそれも受け付けず爆発しちゃうんだとか。

い、いくらなんでもやりすぎだろ! 当然そのツッコミは作中人物からも出ます。そう、出なきゃおかしい。なんで関係ない近隣諸国までまとめて放射能浴びてくたばらなきゃならないんですかって話ですよ。なんでこんな馬鹿げた兵器を!
でも、サデスキー大使は真顔で答えます。「検討の結果、これが一番安く済む経済的な方法だと結論が出た」
経済とかじゃないだろ! 人類全部滅んだらまずお金がどうとかの話じゃないだろ!
というかそれ、「攻撃したら人類皆殺しだからよろしく!」って宣伝してなきゃ意味ないじゃん! そんなツッコミにも、
「来週の党大会で発表する予定だったので、それまで秘密にしていた。首相は人を驚かせるのが趣味だ」
とっても驚いたよ今! そういうものを開発したならすぐ言えすぐ! いつ言ってもびっくりするから! すぐ言え!

嗚呼、人類はこんな馬鹿達のせいで滅んでしまうのか! 人類最悪の日を目前に控え、しっちゃかめっちゃかするクソアホ首脳陣の頓珍漢なやり取りを描いたブラックコメディ作品。それが本作です。



まあ、古の名作映画ですので、私が色々考察したりするまでもなく、内容は語りつくされていることと思いますが。やはりここは私なりにこの映画の見どころを語っておきませんとね。
本作、ホンット登場人物が狂人祭りなんですよ。狂人同士が真剣になって最初から最後まで狂ったこと話してるんですよ。

リッパー将軍の狂気っぷりはもう言うまでもないですね。この人がすべての元凶なわけですけど、意味の通らんことを延々と、しかも激昂したりせず冷静に話し続ける。マンドレイク大佐もなんとか調子を合わせて彼の気持ちを変えさせようとするんですよ。でも、はじめは堂々としてたのに段々卑屈になっていって。武器持ってる狂人が相手ですからしょうがないですよね。
そしてなんとか暗号を割り出し連絡しようとしても、そこに現れる別の軍人がまた話の通じない男だし。大統領に一刻も早く連絡しなきゃいけないのに公衆電話使わされるし。天下の一大事なのに、いやこれ冗談じゃなくて大統領に繋いでくれ早く! アッ電話するための小銭がない! コレクトコールで頼む! 無理か! ああもう! ってな具合でこれまたつまづきっぱなし。常識人が振り回されてばっかりです。

ああ、常識人といえば、大統領も忘れちゃいけません。緊急事態を告げようとソ連の首相に連絡したら、首相はベロベロになるまで酒飲んで爆音で音楽かけながら女とヤってる最中だし。一国の首相に、子どもを諭すような口調で、「いい? 君の国にね! ウチの飛行機が間違えて飛んで行っちゃってるみたいなんだよ! わかる?」ってな具合で言い聞かせないといけないんですよ。それプラスあの大使でしょう、もう味方も敵も訳の分からんヤツばっかりじゃないですか、ただでさえハゲてる大統領が心労で更にハゲちゃいますよ。というかその髪大統領業務のストレスのせいじゃないですか? 大変そうですもんね、特に部下がこういう感じじゃね。

タイトルにもなっているストレンジラブ博士だって、まともな男じゃありません。
ドイツから帰化し、アメリカに尽くす科学者であるはずなのに、チョイチョイ大統領を「マインフューラー(総統閣下)」と呼び間違えるし、うっかり右手を高く掲げようとしてしまうし、ナチスドイツ時代の思い出がどうも抜けきってないみたいです。どうやら頭には選民思想がキッチリ残ってるみたいですし。話し方もかなり独特です。サングラスと車椅子という独特の風貌も相まって、登場シーンは少ないのにかなり存在感のあるキャラクターですね。
この大統領&大佐の常識人とストレンジラブ博士が、同じ役者によって演じられているってのがまた驚き。言われて初めて気付きました、イメージ全然違ったもので。話によるとホントはコング少佐までやるはずだったらしいですからね。同じ映画の中でそこまで演じ分けられるっていうのは、かなりの力量がいることだと思います。

で、このワケ分からん人々とキューブリック監督の皮肉的ジョークが組み合わさって、全編通して「えぇ……」と言いたくなるような状況が続きます。
まず登場人物の名前からして愉快ですもんね。ストレンジラブ(異常な愛情)って名前も既にブラックジョーク的ですけれども。核を落とす少佐の名前はキングコングですし。全ての元凶である将軍の名前はジャック・リッパー。明らかに某殺人鬼を意識しています。そして「いっそソ連を潰そう」と大騒ぎしていた空軍司令のファミリーネーム「タージドソン」って「膨れ上がった息子」ですよ。怒張したチンポですよ。会議に出る直前まで女とヤろうとしてましたし、会議に出てからも女と電話したりしてますし、まあ、妥当な名前か。

そして、上で書いた通り、軍部や首脳陣は徹底した無能揃いに描かれています。こういう人が本当に上に立ってたら、マジでいつか世界がやられるんじゃないかな……って思うくらい。映画冒頭の「これはフィクションであり、実際にこのようなことは起こりえない」という空軍からのメッセージが逆に信憑性を高めています。
基地に近付く者を始末するよう命じられた兵士たちは、将軍の命令を疑いもしない。狂った将軍を止めに来た皆さんを「敵も流石だなぁ、どう見てもアメリカ軍じゃねぇか」言ってガンガン攻撃します。マンドレイク大佐が大統領に連絡させろと言っても「そんな命令は受けていない」の一点張りでまるで融通が利かない。おお、「平和こそわが職業」の標語が虚しいばかりです。キューブリック監督が、戦争に携わる当時の偉い人たちをどんな目で見ていたのか想像しちゃいますね……。

しかし、この映画最大の皮肉は? と問われれば、やはり副題「私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」ですよね。やっぱ疑問ですよね、水爆は爆発したらものすごい被害だし、どうしてそれを「心配するのを止めて愛する」んだ? と。私も最初この映画を知った時そこが一番気になりました。
それが明らかになるのは、物語も終盤。てんやわんやの結果、最早この星の未来がどうしようもなくなった頃。そしてどんだけスゴイ理由かと思ったら、本ッ当にしょうもない理由です。「結局こいつら自己保身とセックスのコトしか考えてない」ってことでしょうね。ラストのストレンジラブ博士の行動も、要はそういうことで。で、呆れかえってるうちに、楽しげな音楽とキノコ雲でエンディング。もう笑うしかないことです。



……なんて、いかにも分かったような口を利いてますが、正直私アメリカ的ユーモアとかジョークとか理解するのに時間かかる系の人なんですよね。ですので、この映画の意味を理解するために何回か内容を反芻せねばなりませんでした。最近の若い人向けに作られたコメディみたいな内容だと期待してみると「?」ってなりますので、そこだけご注意ください。あと学校で習った歴史を完全に忘れている人は、冷戦という出来事についてちょっとだけ思い出してからご覧くださいね(流石にいないかなそんな人は)。
しかしまあ、一旦そういうモンだと思ってこの映画を見てみたら、政治家ってのは結局何年たっても同じようなモンなんだなぁと思わされますね。馬鹿な議論を繰り返して、保身とセックスのことばかり考えている、と(実際にそうかどうかはともかくとして、少なくとも50年後に至るまでそのイメージを払拭できずにいるのは間違いないですよね)。
ブラックジョークに理解のある方は、古い映画だからと敬遠せずに、一度是非ご覧になってください。キューブリック流の悪意がピッチリ詰められた本作は、「今も変わらぬ」メッセージを我々に伝えてくれています……。



それでは、次回のホメカツをお楽しみに!

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posted by 黒道蟲太郎 at 01:27| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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