2015年04月26日

Sound Horizon『Nein』をホメる!

どうも、黒道です。

……さて、本日の記事なのですが。音楽CDについてホメていきたいと思います。
いやね、本来、あんまりジャンル手広くやり過ぎるとアレなのは分かってるんですよ? そもそも私ボカロPやってますけど全部勘なんで音楽理論とか全然分かんないしピアノ以外の楽器分かんないしインプットも狭く浅いから全然音楽について語れないし。
でも私もう8年もこのアーティストのファンやってるんですよ。今度コンサートにも行くんですよ。その新譜ホメないわけにはいかないじゃないですか。いや誰に強制されてるわけでもないんだからいいんですけどホメなくても。もういいや、ホメちゃいます。次音楽ホメるのいつになるか分かりませんけど。

Sound Horizon『Nein』



2015年、サウンドクリエイターRevo率いる音楽ユニット、Sound Horizonの9th Story CDです。
なお、『Nein(ナイン)』とは、ドイツ語で『いいえ』の意です。無論『9』とかけてあります。

ああ、サンホラ懐かしいな、って方も多いのかなと思います。
中学生とか高校生くらいまで聴いてたなぁ、とか、あの頃はRevoを陛下とか人殺しソング界の貴公子とか言って……とか、モロに影響を受けた詩を書いてた、とか……嗚呼、やめよう、この辺はもう黒歴史にしたい方もいるかもしれない(ちなみに私はまだサンホラに影響されて曲作ってますから、全然抜け出せてませんね……)。

でも、今思い出してはならないことを思い出して頭を抱えている皆さん。
元サンホラーの皆さん、サンホラどこまで追いかけてました?
あらまりが抜けるまで? Romanは聴いた? Moiraまで? Marchenはどうですか? リンホラ始まってからご無沙汰?
大丈夫です。このアルバムは、今挙げたようなアナタ方すべてを対象にしています。
あの頃本気で楽曲考察していた皆さんは、きっと新たな『発見』をすることになるでしょう……。
(逆に、これまでサンホラを聴いたことが無い人にいきなりオススメはできないかな……?)

Sound Horizonのメジャーデビュー10周年記念作品第3弾と銘打たれた本作。
まさに10周年にふさわしいその内容を、早速紹介していきたいと思います。
ややネタバレアリです、ご注意ください。

メジャーデビュー10周年を記念するこのアルバムは、Sound Horizonのこれまでを『否定』する銀盤です。
……ちょっと語弊がありますが、まずはあらすじの方に触れていきましょう。無論これは黒道の解釈ですので、100%信頼されてしまうと困りますよ。あの頃のように、考察は是非自分自身で。

現代・幻想日本。道端で電話する若いバンドマンがひとり。彼の名はノエル。ロックバンド『ヴァニシング・スターライト』のメンバーです。
フランス人の父と日本人の母の間に生まれたハーフである彼は、異世界から来たという謎のプロデューサー・Revoの力添えでメジャーデビューを果たしました。なんとRevoに連れられて、我々のいる『こちらの世界』でもライブを行ったこともあります。
詳しくは、10周年記念作品第2弾『ヴァニシング・スターライト』をご参照下さい。



で、そんな彼が道端で一体何をしてるかというと……迷子になってます。いや、マジで。迷子になっちゃったんです。マキシCDで主役張ったような男が。おいおい。
そんな迷子のノエルは、雑居ビルの片隅に、明らかに場違いな洋館を発見します。お店みたいです。店名は『西洋骨董 屋根裏堂』。嗚呼、もう名前がヤバいです。近付いてはいけないタイプの名前です。
しかしノエルは、まるで見えざる腕に引き寄せられるように、この建物に入ってしまいます。
中で待ち構えていたのは、黒い髪に紫のドレスの妖艶な女主人。胸に抱いた黒猫が『Miau♪』と鳴く。しかもどう見てもヤバいですこの店主。ノエルが見てる前で、見た目がマダムになったり幼女になったり老婆になったりします。明らかにヤバいタイプのヤツだと気付いたノエルですが、不思議な力で店主の話を聞いてしまいます。

ノエルを『13番目のお客様』と呼ぶ謎の店主は、様々な『骨董品』を紹介します。
それは、過去のStory CDに関係する様々なアイテム。白銀の甲冑……壊れたマリオネット……魔法のランプ……ひび割れた仮面……死の宝石……死神の鎌……眠りの糸車……そして……サングラス?
西洋でも骨董でもなさそうなこのグラサン。しかしながら、自分を世話してくれたプロデューサーの影響で、ちょっとこの商品が気になっちゃうノエル。それを見て店主は言います。
「その骨董品は、持ち主を選ぶ。それが身を許すなら、お代は結構。対価は金銭以外で、然るべき時に必ず払われる……」

気付けば元の街に戻っていたノエル。洋館などどこにもありません。
ノエルは慌てて待ち合わせ場所を目指します。その手に、グラサンを持ったまま……。

普通じゃない店の商品であるそのグラサンは、当然ながら普通のグラサンではありません。
その正体は、≪遮光眼鏡型情報端末(the Remarkable, Evolutional and Valuable Optical-device)≫……略して『R.E.V.O.』。自我を持つ人工知能を搭載した、未来の情報デバイスだったのです。骨董とは何だ……?

物語の創造者・Revoを『主(mein herr)』と呼ぶ『R.E.V.O.』。
未来において『主』を失った……恐らくは、『主』と死別したであろう『R.E.V.O.』は、自己の存在意義、そして、『主』が紡いだとされる≪地平線≫の存在意義について考察し始めます。ワタシは何の為に生まれ、≪地平線≫は何の為に生み出されたのか?

彼は、その存在意義を、≪地平線≫への介入に求めます。

第一の地平線から、第八の地平線。これらの世界に存在する様々な『悲劇』
それに物語の外側から介入し、結末を左右する因子を『否定』し、『幸福』な結末を導いてみよう。

彼は地平線に≪意識と呼ばれるモノ≫を接続し、悲劇の主人公達の何かを『否定』し続けます。

恋人たる悲劇の詩人を訪ね歩いた盲目の詩人ルーナも、その悲劇に介入されます。
私は愛した、私は生きてた、そう言いながら逝ったある母親も、その悲劇に介入されます。
骨になった我が子を抱いて微笑む女も、その悲劇に介入されます。
エリスと呼ばれ、自分を裏切った男を赤く染めた女も、その悲劇に介入されます。
生まれて来る前に死んで行った冬の子を見送る母も、その悲劇に介入されます。
水神への供物としてその命を終えたアルテミシアも、その悲劇に介入されます。
幼き日の恋にその生命を捧げたエリーザベトも、その悲劇に介入されます。

人間の心が完全に理解できなくても、自己保存の本能を持ち、喪失を恐れる『R.E.V.O.』。
悲劇へ至る因子を取り除けば、彼女達の生命は長らえる……しかし、それは本当に幸福なのだろうか?

そして遂に『R.E.V.O.』は、ノエルの人生に起きた悲劇をも『否定』しようとするのです……。

サンホラといえば、『人殺しソング界の貴公子』とかいうふざけた呼び名があったことからも分かる通り、その楽曲内容は悲劇のオンパレードでした。やれ誰が死んだ、誰が裏切られた、誰が別れ別れになった……その悲劇の上に咲いた物語を、ローラン達は楽しんできたわけですが。
メジャーデビュー10周年記念というこのタイミングで、便宜上とはいえRevoの名を持つ者が、その悲劇を突如『否定』し始めたのです。
確かに、地平線の登場人物達だって、なれるもんなら幸福になりたかったはずです。死にたくて生きてた人、悲しい思いをしたくて生きてた人、なかなか居ないでしょう。ではそんな悲劇はやめて、もっとみんなのコトを『幸福』にしてあげよう。それを公式がやってしまうというのですから。なんという皮肉。そして、10周年という節目に相応しいチャレンジでしょうか。

クロニクルからメルヒェンまで、よく知る物語が大胆に改変されていく様子は、見ていて痛快でもあります。
誰が想像するでしょうか、スターダストの『エリス』が突如男のことなどどうでもよくなり伝説のデザイナーと組んでモデルとして大成し実は自分はレズビアンであったコトに気付き彼を寝取った女と和解し幼少期の虐待経験を基に児童虐待防止団体へのチャリティ活動を始めるなんて。ウッソだろお前、こんなん二次創作でも誰もやらねぇよ!
ローランのお姉様方の中には、『エレフとミーシャがもし生きて再会出来たら――』とか夢想して二次創作しちゃった方もいるでしょう。はい、来ましたよ。エレフとミーシャが生きて再び出会う日が。これからは二人で一緒に何があっても離れず生きようと誓う日が。それどころか、浜辺を二人で追いかけっこしながら『ミーシャ♡ ミーシャ♪』『エレフ♡ エレフ♪』する日が来たんですよ、これ公式ですよ。頭がクラクラしちゃいますよ。

ふ、ふざけてるのか!? 遂に気が狂ったか!?
まあ、確かに何割かは……でもこの楽曲群は、単に『死ななくて済みました、悲劇は回避されました、よかったなぁ』では済みません。
この作品は、我々に語りかけてきます。
本当に大切にしたかったコトを捨て、適当に心の辻褄を合わせて、それなりの幸せと共に生きていくのが、本当に幸福だろうか? と。

『R.E.V.O.』の考えるところでは、大切なのは『目の前の悲劇が回避される』こと。それはつまり、あまりにも大きな絶望や悲しみにぶつかることなく、その命を長らえること。うーむ、一理あります。
しかしながら、『R.E.V.O.』はその結末を導く過程で、人間にとって大切な何かを『否定』しているのです。
「命よりも大切なモノなんてあるでしょうか?」とでも言うように、彼は自分に理解できないそれらを『ad921d60486366258809553a3db49a4a(Unknown)』と呼び、容易に『否定』していきます。

悲劇の詩人バラッドも、恋人への想いさえ断ってしまえば、罪人として処刑されたりはしないでしょう。
盲目の詩人ルーナも、恋人を諦めて他の男を見つけてしまえば、視力も失わず幸せに暮らせるでしょう。
エレフセウスも、奴隷を解放しつつ戦争なんてやってないでミーシャと過ごせば何も不幸なコトなどないでしょう。
エリーザベトも、幼い恋のことなんて忘れてしまえばそれなりの生き方ができるはずです。

でも、それでいいの? アンタ達は、どんなに歪な形でも、大切にしたいものを捨てないでその命を燃やしたんじゃないの?
……等と、当事者でもない我々が容易に断ずることもできません。見てください彼女らの幸せそうな様子。みんな、自分の手で抱えられる程度の小さな幸せを得て、満足そうにしてるじゃありませんか。
誰だってホントは何も奪われたくないに決まってるんです。いらん苦労はしたくありません。
じゃあそのいらん苦労をナシにしてあげます。いらん苦労を前にして頑張って来たアナタの気持ちは『否定』するけど、アナタの命が無くなることに比べたら、気持ちとかいうよー分からんモノなんて些細なコトでしょう?
そう言って、彼女らのキツイながらも頑張って来た人生を『否定』し、もっと平穏(注:例外アリ)で幸福な人生をプレゼントする。そんな『R.E.V.O.』の行為を、皆さんはどう断ずるでしょうか。最後の楽曲『最果てのL』におけるノエルの叫びを、どのように感じ取るでしょうか。

長くサンホラを離れていた皆さん。久々にこのアルバムを聴いてみたら、驚くところが色々あるはずです。変わったところ、変わっていないところ。色々あります。

今回はシンフォニック系のアレンジが多めで、バンドサウンドはやや抑えめになっています。かと思えばリード曲はいきなりシンセバリバリのケロケロボイス。方向性が新しすぎる。これを聴けば、サンホラが常に進化を続けていることに改めて気付けるでしょう。
歌詞カードも、以前より難読部分が増えてます。絵が増えました、絵が。歌詞を覚えずにカラオケで歌ったら手も足も出ないまま終了しちゃいそうです。「曲を聴くまでどんな歌詞なのか分からない楽しみを作りたい」「折角の歌詞カードという表現媒体があるのだから、そこまで含めての作品にしたい」というRevo氏の思いが、重いッ!
ああそうそう、今回、猫耳キャラが出てくるんですよ? しかもひとりはRevoに似て非なる人物です。ビジュアル面でも攻めてます。

かと思えば、あの懐かしのキャラクター、あの懐かしのメロディーもどんどん飛び出します。アレンジが変わっても、Revo節は健在。SEも台詞もナレーションもバリバリあります。楽曲の長さも、いつも通りとんでもない。まるで実家のような安心感にホッとすること請け合いです。
また、『結構な頻度で障碍を持つ人が出現する』というサンホラあるあるありますが、今回もそうです。むしろそういうメタなネタ自体が仕掛けとして組み込まれているフシがあります。是非ここは考察してみてください。
あ、『将軍に続け!』シリーズは今回も健在です。『Roman』でやって以来、現代日本を舞台にした『バニスタ』以外は全部やってるんじゃないかな? 変わらぬ伝統芸能です。今回はアッと驚く将軍が登場しますよ。

そして、考察ガチ勢の皆様には、恐るべき考察材料がポンポン投下されていることも報告せねばなりません。
まさか、あのキャラクターにそんな過去/未来が? このキャラクター、この時期に生きてたの? なんてのは序の口。今までの考察がぶっ飛んで消滅するくらいの爆弾もいくつか。
必ずや過去作を改めて聴いて、その意味を問い直したくなることでしょう。

そう、このアルバムには、『聴くと過去作を聴き直したくなる』仕掛けが沢山、沢山あります。
メジャーデビューから10年。その振り返りに、これ以上相応しいアルバムがあるでしょうか。
映像作品『アソホラ』で10年分のライブを振り返り、『バニスタ』でRevoという個人を振り返り、そして『Nein』で地平線を振り返る。Sound Horizonの10周年は、過去を振り返り、そして『未来へ繋ぐ』銀盤。それがこのアルバムであります。

……『未来へ繋ぐ』
そう、もうお気付きかもしれません。なんとサンホラ、まだ8番目の銀盤を出していないのに9番目を出すという『掟破り』をやらかしています。数字の順番完全無視です。無論『Nein』は第八の地平線よりも後に存在すべき銀盤ですから、未だ見ぬ8thに関する言及も、断片的ながらあります。一体、どんなアルバムになるのか……期待が膨らみますね。

ローランは、もう聴くしかありません。喜んで飛びつきましょう。
元ローランは……懐かしい気持ちで、一度手に取ってみませんか。ノエルというキャラクター理解のため、『ヴァニシング・スターライト』も併せて聴くのをオススメしますけど!



ん、記事投稿日に何らかのインシデントが発生したようですが、日付には間違いなく4月26日に投稿されたとあり、何も問題が無い。いいね?

それでは、次のホメカツもお楽しみに!

↓monacoinによる投げ銭メント行為は大歓迎です。
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posted by 黒道蟲太郎 at 23:59| Comment(2) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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失礼致しました。
Posted by つねさん at 2015年05月20日 16:18
面白い記事でした。
十年の月日、中二病をただの中二病で終わらせなかったRevoさんの信念と執念は、アーティストとして、クリエイターとして、本当に尊敬できるものがあると思いますね。
Posted by at 2015年09月22日 13:31
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