2015年04月25日

映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』をホメる!

どうも、黒道です。
はい、やって参りました、本日のホメカツは、ティム×ジョニー祭り第4弾であります。
以前から当ブログをご覧下さっている方は、もうご存知かな。

映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』



ティム・バートン監督、2007年。ジョニー・デップ主演のミュージカル映画です。

チャーリーとチョコレート工場』『コープスブライド』『シザーハンズ』とティム×ジョニー映画を見てきたわけですが、本作はこの二人のコンビで初のR15+指定だったとか……しかも原作はミュージカル、それを映画化したというんですから、興味が沸かないはずがありません。わぁいミュージカル、黒道ミュージカル大好き。
リクエストしてくれた上、わざわざDVDを渡してくれた知人に感謝しながら、この映画をホメカツしていくことといたしましょう。

1800年頃、ロンドン。
世界を旅した船乗りの若者、アンソニー。キましたよ、アンソニー、いきなり優男です。ミュージカルの王道、優男です。
「世界には色々な場所があるが、このような表情を見せてくれるのはロンドンだけ」……そう歌い上げます。いいですね、希望にあふれるこの感じ。見た瞬間分かりますね、コイツは若いヒロインとくっつくんだって。
そしたらその隣に、いつもよりかーなーりー険しい顔をしたジョニー・デップが現れます。彼の名はスウィーニー・トッド
「そう、このような街はロンドンだけ。ゴミが蔓延る最低の街だ」
アンソニーの後に続けて歌いながら、彼は昔話を始めます。

フリート街に、理髪師の男が住んでいた。その名はベンジャミン・バーカー。彼には貞淑な妻、そしてまだ赤ん坊の娘がおり、とても幸せだった。妻の名はルーシー、娘の名はジョアナ
ところが、妻の美しさに目を付けた男がいた。彼の名はターピン。判事をやっている男です。ヤバいですね。汚い金持ちです。しかも演じるのはアラン・リックマン。ハリー・ポッターシリーズでスネイプ教授を演じています。もう顔が悪そうでしょ。どう見てもこれから権力を行使して女を奪う奴の顔でしょ。彼は当然のようにその権力を行使し、ベンジャミンを無実の罪で投獄。なんと15年もの間、彼は投獄されてしまいます。
もうお分かりでしょうが、このベンジャミンこそ、15年後のスウィーニー・トッド。彼は命からがら脱獄し、アンソニーに助けられ、名前を隠して再びこのロンドンへ戻って来たのです。
「また私に会いたければ、フリート街へ」
そう言って、ミスター・トッドはアンソニーと別れます。

トッドは目指します。かつて自分が理髪店を開いていた、フリート街のあの場所を。
しかしそこは、ロンドン一マズいと評判のミートパイ屋になっていました。女主人ミセス・ラベットは、この店がいかにヤバいか歌って聞かせます。お分かりかもですが、パッケージでよく一緒におるあの女の人ですね。ちなみに未亡人らしいです。
……ってかマズいってレベルじゃねぇぞこの店のパイ。そこら中にゴキブリが蔓延ってるし、それを麺棒で潰すし、その麺棒で調理するし。トッドも思わずひと口で「ヴォエ!」ってなるレベル。ってかゴキブリ多過ぎなんですよ、パイの中からすら這い出してきましたよ。そもそもこの店、貧乏すぎて肉がかえなくてミートパイという大前提が成り立ってないんですよ。混入したゴキブリとラードしか入ってないし皮も分厚い。そりゃマズいし流行らんわな……。
「マズいから早くビールで流し込んで! でもビールだけじゃどうにもならないから奥でジンでもどう?」
およ、ひょっとして誘ってるのかなこの人。エロ未亡人かな。
私の邪推は半分当たっていました。彼女は以前からベンジャミンを知っていたのです。15年も前の話ですから、すぐにトッド=ベンジャミンとは気付きませんが。トッドも知ってたのかな彼女のコト?
まあとにかくです、彼女は、この建物の二階にかつて存在した理髪店について語って聞かせます。

それはそれは美しい男がいたが、無実の罪で投獄された。
その妻に判事は求愛しまくったが、妻は泣き暮らすばかり。
そんな彼女の様子を見て、判事は伝えます。「此度の判決で心をお痛めのことと存じます。そのことで話がしたいので、どうかおいでください」
それに騙されてしまった奥さんは、知らん間に仮面舞踏会に招待されます。あとは無理矢理酔わされてからの仮面ファックです。出やがった! 私そういうの苦手なの知らないな! 殺す!
……そして彼女は毒を飲み、その娘は判事が後見人として預かった……というのがコトの顛末だと。
再び妻子と会える日を楽しみにしていたトッドは、深い怒りと哀しみに包まれます。そして誓うのです。復讐を。このパイ屋の二階、かつてベンジャミン・バーカーの理髪店があったその場所で、自分は再び理髪店を始める。そして必ずや……あの判事に復讐を果たすと。

一方その頃アンソニー。とある大きな家に、美しいお嬢さんがいるのを発見します。
彼女こそ、邪悪な判事ターピンに奪われたベンジャミンの子、ジョアナ。その辺にいた乞食の女に話を聞いたアンソニーは、なんとか彼女をモノにしたいと考えます。でも乞食の女は「アレに手を出せばタダでは済まない」と警告。まあ、アンソニーはミュージカルの優男特有の行動力でそんな話聞かないんですけどね。
しかしまあ、乞食の女は正しかった。ちょっと見てただけなのに、ターピンはアンソニーをボッコボコにして、「次この辺をうろついてるのを見たらお前をブチ殺すからな」と警告して更にボコボコにして家から放り出します。ボコボコにしすぎです。まあ、後半はターピンの部下・バムフォードのせいですけどね。バムフォードも15年前からターピンの部下ですから、コイツもトッドの復讐の対象です。
で、ボコボコにされたアンソニーですが、もちろんミュージカル優男特有の不屈の魂で「君をさらいに行くよ、ジョアナ」とか歌いながら去ります。大丈夫、君ならできるさ。だってミュージカルに出てくる優男だからな。
関係ないんですが、バムフォードの演者は「ハリー・ポッター」シリーズのワームテール役でお馴染み、ティモシー・スポールです。ハリポタ役者が二人も……いやちょっと待て、ミセス・ラベットの演者・ヘレナ・ボナム=カーターもハリポタに出てますね。すごいや。

ま、優男は放っといて、トッドですよ。トッド。
トッドの計画はこうです。まず、お店を出します。で、トッドの神業テクでフリート街の有名理髪師になります。噂を判事が聞きつけます。店にやって来ます。そこで一気に喉をかっ切り、殺します。完璧。
店は出しました。だので、早いとこ店の評判を判事の耳に入れないといけませんね。そこでトッドは、街の市場で『最高の腕前を持つ理髪師』を名乗り詐欺行為を働いていた男、ピレリに堂々と喧嘩を売ります。
何やらミスター・サタンみてぇな見た目をしたピレリは、大衆の面前で自分を馬鹿にされたことが気に食わない。そんなピレリの頭に血が上っているところに、トッドは5ポンド賭けた勝負を挑みます。どちらが早く、なめらかに髭を剃れるか勝負。勝負の審判は、たまたまその場にいたバムフォードに任せて。
んで、大した腕もないピレリは、大方の予想通り、アッサリとトッドに敗北します。ピレリがあーだこーだと歌ってる間にジョリジョリジョリッとね。
こうしてトッドは大衆に自分の存在をアピールし、ついでにバムフォードに取り入るわけです。公衆の面前でピレリを負かして有名になるところまでは計画通りでしょうけど、その場にバムフォードがいたのを即時に計画へ組み込んだ機転、スゴイ。バムフォードは「一週間以内に訪れよう」と約束。やった、標的@がアッサリ。

ところが数日待ってもバムフォードは来ません。トッド、そーとーイラついてます。つってもまだ一週間は長いぞ、落ち着くんだ。ミセス・ラベットもそう言っている。
すると、突然店を訪れる者が。よーやく……ってアンソニーかーい!
あまりの空気の読めなさにトッドの不機嫌さはマッハ。でも、その場でアンソニーから重大な情報を聞き出します。自分の娘の話。優男、なかなかイイ働きをする……と思ってたら、空気の読めない優男アンソニーはなんと、「ジョアナをさらって駆け落ちするから、馬車を呼ぶ少しの間だけここで匿わせて!」とお願いしだします。実の父親に。
マジかよ、と思ってたら、ミセス・ラベットがそれを承知。ちょちょ、勝手に!
でも彼女に言わせれば、娘だけもらってアンソニーを殺せばOKじゃん、というわけ。それで、私達で育てたらどうかな♡ 母親の愛情を知らない彼女に、私ならそれを教えてあげられるわ♡ と。あっヤバい、これアカンヤツですわ。最初からそういう感じはあったんですけど、ラベット未亡人、どうやら復讐とかどうでもいいからトッドを自分のモノにしたいんですよね……。

って、話がややこしくなりだしてる時に、更に話をややこしくするマンが。
出た! ミスター・サタン……じゃねぇや、ピレリだ!
負け犬のモブ野郎が何しに来たんだよお前! と思ってたら、なんとコイツ、トッドを……いや、ベンジャミン・バーカーを、強請りにきていたのです。
「その剃刀を見て分かった。覚えていないか? たった二週間床を掃除していただけだったからな。でも俺はここに座って、いつかアンタのようになりたいと思ってたんだ」
ワオ。昔の従業員かよ。どこでどう道を誤ったんだ。そしてこんな汚いオッサンが従業員だったのか。15年前はもっとマシだったのかしら。トッドもトッドでアンタ今いくつよ。
ともかく、ピレリは図々しくも「儲けの半分をよこせ、あと5ポンドも返せ、でないと役人に言いつける」と主張してきまして。嗚呼やめなさいピレリ、目の前にいるのはベンジャミン・バーカーじゃない、これから悪魔の理髪師になる男、スウィーニー・トッドだぞ……ほらもう遅い。ヤカンでしこたま殴られ、ブチ殺されてしまいました。まさか『悪魔の理髪師』の初めて(殺しの)を奪うのがこんな汚いオッサンだとは……しかも剃刀じゃなくてアツアツのヤカンで殴るんかい。
しかしね、流石のトッドもまだ殺人初めてですから動揺するわけですよ。自分ちの二階で殺人が起きたミセス・ラベットはもっとビビるわけですよ。「罪のない人を殺したの!?」と。でも「俺を強請りに来た」と言った瞬間「なら仕方ない」と言って、しかも財布まで奪った。なんという太い神経。
どうすんだコレ、となっているうちに、なんと念願の判事がご来店。

というのもですね、例のバムフォード、ターピン判事にこの店を勧めていたんです。
あの変態ターピン、「娘をより守るために求婚したけど喜ばれなかった。ナンデ?」と言うわけです。そりゃそうだろお前。
って思ってたら、「恐れながら」とバムフォード。おっ、言ってやってくれバムフォード。
「身なりをもっと綺麗にしないと、女は喜びませんよ」
そこじゃねぇわ。
でもなかなか良い働きをしてくれた。すげぇ腕のいい理髪師がいるから、ソイツに髪とか髭とか整えてもらえば、娘も喜んで求婚に応じますよ! と続けるのです。そりゃいいな、とターピンはルンルン気分でこの店に。やるじゃんバムフォード。で、今に至ると。

まさかこんなアッサリ判事が来るとは思いませんから、内心大喜びのトッド。
今までに無いほど愛想よく出迎えて、判事と一緒に歌などうたいながらその髭を剃り始めます。そう、この完全に油断しきってる時こそ、判事をブチ殺す最大のチャンス! 今だ! ヤッチマエー! 私達が高く右腕を掲げたその時!

「トッドさん! ジョアナと駆け落ちの件で!!」

空気読めないマン!!! 優男アンソニーお前!!!! いい加減にしろ!!!!!
一瞬で駆け落ち計画がバレたアンソニー。ブチキレて出て行くターピン。完全に殺すタイミングを逃したトッド。というかターピン、「君は悪い友人と付き合いがあるようだな! こういう店にはああいうのが相応しい!! 私はもう来ないぞ!!!」と宣言して出て行っちゃいましたよ。全ての計画がダイナシですやん。ブチキレターピン、ジョアナを馬車に詰め込んでどっかに連れて行かせちゃったぞ。アンソニーお前なんちゅうことをしてくれたんや、なんちゅうことを……ミュージカル優男だからってやっていいコトと悪いコトがあるぞ……!

当然トッドも、ものすげぇショックを受けます。これでもう判事は二度とこの店を訪れないでしょう。もう絶望です。自暴自棄です。そしてヤケクソになった彼は目覚めます、殺人鬼としての性質に。
もうダメだ、もういい! どうせロンドンなんてクズしかいないんだから、判事に限らずどんどん殺そう! いつの日かアイツの首を掻き切るまで、その練習台としよう! さぁ、スウィーニーの理髪店だよ、どうぞいらっしゃい!
……おぉう、遂にトッドが狂ってしまった。
自分の絶望を晴らせないもんだから、ロンドン中に絶望をバラ撒こうてか……。

しかし狂ったのは彼だけじゃありません。
彼の魂が邪悪な殺人鬼に堕ちると同時に、ミセス・ラベットはお店を新装開店しました。
前より薄くておいしい生地に、どういうわけかお肉がタップリ。前より数倍美味しくなったそのパイに、連日お客さんが殺到です。
……そうです、トッドがばら撒いた絶望の搾りカス、その再利用法が発見されてしまったのです。
秘密は二階の理髪店、お客様を座らせる椅子にあり。身寄りのない者、ヨソモノがこの店にやって来たら、彼のカミソリが猛威を振るいます。首を掻き切り殺したら、続いて足元のスイッチを踏んづける。そうしますと床がパカッと開きまして、同時に椅子が後ろに倒れる。座っていた死体は奈落の底へ。地下室の硬い床に叩きつけられます。
あとはミセス・ラベットがこの死体を挽き肉にしてパイに詰め、大きなオーブンで焼き上げれば……大人気のミートパイ、出来上がりであります。
ヴォエ!(嘔吐)
例の乞食女がカラクリを察し店に現れ「Mischief! Mischief!(悪行! 悪行!)」と騒いでも、ミセス・ラベットは彼女を追い出して知らんぷり。「稼いだお金で海辺に家を買って、二人で住みましょうよ♡ アナタは海辺でお店を開いて、のんびり暮らすの♡」 なんて言ってます。オォーウ、マジでヤベェのはこっちなんじゃないか。

そんなある日、「助けてトッドさん!」と飛び込んでくるのが、あの空気読めない戦犯優男アンソニー。遂にジョアナの居場所を突き止めたというのです。
なんとそこは精神病院。1800年頃の精神病院ですから、当然現代みたくキレイな病院じゃありませんよ。狂ったヤツはテキトーにみんな大部屋に詰め込んどけ! みたいな感じです。精神病患者は囚人並みかそれ以下の扱いですよ。ターピン、いくら怒ったからってこんな酷い環境の場所にぶち込むか……!

それを知ったトッドは、妙案を思いつきます。
「カツラに使う毛髪は、精神病院で買うものだ。カツラ職人の弟子の振りをして、彼女をさらえ」
「なるほど、流石トッドさん、ありがとう!」

単純な優男は大喜びで作戦を実行しに走ります。
無論、計画はこれだけじゃありません。続いてトッドは手紙をしたため、判事へ送ります。
「判事殿、ジョアナをさらおうとしている男がいます。男はジョアナをさらって理髪店に連れてくるから、夜そこに来れば彼女を取り戻せる」
おお、これで娘も取り返せるし、判事も呼び出して殺せるし、一石二鳥!

……ですが、運命は悪魔に味方しないのです。
トッドの復讐を狂わせるのは、たった一人の少年。名をトビー。元はあのミスターサタンもどき、ピレリの元でこき使われていました。彼が死んでからは、下のパイ屋を手伝いながら、トッドのお使いなんかも頼まれています。さっきの手紙を運んでくれたのも、このトビーです。
トビーは、何も知りません。トッドがピレリを殺したことも、「ピレリはお前を置いて行った」と嘘をつかれたことも、トッドが次々に人を殺していることも、その死体をミセス・ラベットが次々パイに変えていることも、おいしいパイの中身が何なのかも……。
彼は、自分を救ってくれたミセス・ラベットのために、この店に尽くしているのです。
そう、それは少年の淡い恋。トビーはミセス・ラベットを好きになっていました。
……そりゃそうだよなぁ。美人だし子どもには優しいしおっぱい大きいしなぁ。当たり前だよなぁ。あんな胸元開いた服の美女が一日中側にいて優しくしてくれたら何も感じない青少年いるはずないよなぁ。ワカル、ワカル……。
トッドの邪悪さを感じてか、ラベットが慕うトッドに嫉妬してか……それは本人にしか分かりません。トビーはラベットに警告します。トッドは悪いヤツだ、僕があなたを守るよ、と。おっ、おねショタかな……でも僕はお姉さん攻めのおねショタ専門でな。ショタ攻めはあんまり好みじゃないんだ、ごめんなトビー、もう少し違う出会い方をしていたら心の友になれただろうに……そしてトビー、可哀想に、お前はひとつ思い違いをしているよ。確かにトッドは最早復讐の悪魔と化している。だけどそのセクシーで優しいお姉さんは、悪魔の共犯者だ……。
悪魔の妻を騙るラベットは、トビーを優しく諭すと、彼を地下室に連れて行きます。
おぞましいパイが次々生み出される、あの場所へ。
「前からパイ焼きの手伝いがしたいって言ってたでしょ。今から早速してくれる?」
そこには、ラベットの複雑な気持ちがあったのでしょう。トビーのことは、まるで息子のように大切に思っている。でもそれ以上に、自分が愛しているのはベンジャミン・バーカー。彼が今夜成すことを、邪魔させてはいけない。……それとも、本当に見せるつもりだったのかな。地獄の調理場を。ふたりの真実を。
とにかく、ラベットはトビーを地下に閉じ込めてしまいます。
そうとも知らず、のんびりパイでも食いながら、調理場の様子を見ているトビー。……しかし、当然でしょう。彼は知ってしまいます。このパイの秘密を。このむせるような臭い、パイに混入した不思議な物体、部屋の隅に散らかる人間の遺体屑、そして、天井から降り注ぐ死体!

それは、あの判事の右腕、バムフォードの死体でした。
実は、この店でパイを焼く煙がご近所迷惑となっていたらしいのです。そりゃまあ、人間の死体を焼いてるわけですからね……。その調査のために彼が遣わされたというわけ。これはピンチです。あんなモン見られたら、一瞬でこの店終わりですよ。というわけで、すぐさまトッドの理髪店行き決定。
「調理場はもちろんお見せしますが、その前に理髪店にどうですか」
「嬉しい申し出だが、私はまず仕事をして市民を安心させたい」

嘘つけお前。
「新しい香水をお試しになりませんか。女性がすぐに夢中になりますよ!」
「おっそうか行きてぇなぁ」

意外と早く堕ちたな。そしてあっさりと落ちるんですな、首を掻っ切られて。トビーが見ちゃった決定的証拠は、これだったというわけ。
「助けて! 助けて!」
彼は全てを悟り、そして自らの運命を想像し大騒ぎするも、その声は届きません……。

さあ、一方その頃あの優男、アンソニーは。
「金髪のカツラが作りたい」と言って病院の人間を騙くらかし、金髪の人が収容されている部屋へと入ります。明らかにカツラビジネスの為に部屋分けしてますよねコレ。「髪を買うことは、患者とあなた方双方のためになりますから」なんて言ってますけど……人が来るだけで怯え、部屋の隅へ逃げ出す患者達。普段どれほどの苦痛を与えていればこういう反応になるんでしょうか……。
その患者の中に、ジョアナを発見したアンソニー。さっきまで自分を案内していた男に銃を向けます。そしてジョアナだけ連れ出すと、あとはソイツだけ閉じ込めて自分らは外に。哀れ男は普段いじめている患者達の餌食に……嗚呼、因果応報。

とにかくやるじゃんアンソニー、流石ミュージカルに登場する優男は違うぜ! というわけで、ジョアナを連れてトッドの理髪店を訪れますが……誰もいない。

実はこの時、トッドはラベットと共に地下にいたんです。いなくなったトビーを探すために。外に出してもらえないと悟ったトビーは、隠れてやり過ごす道を選んだんですね。地下はそのまま下水道にも通じておりますから、小柄なトビーならどこにでも隠れられると。
「アナタにあんなコトはしないわ、出ておいでトビー」
ラベットは言います。しかしトッドの手には、明らかに刃物が。二人の思惑は明らかに異なっています……。

そうとも知らず、ジョアナを部屋に置いて外へ飛び出すトッド。
「30分で馬車を呼ぶよ」
夢の逃避行がすぐそこに。それでも、今まで夢といえば悪夢しか見てこなかったジョアナは、不安でたまりません。本当に逃げられるのだろうか。仮に逃げおおせたとして、その後はどうすれば……。
そこへ現れるのは、ワオ、あの乞食女です。バムフォードが……つまり役人が建物内に入ったのを見て、彼にラベットの悪行を告発するためやって来たのです。どれだけ彼女を告発したいんだ。ともかく、慌てて隠れるジョアナ。
「役人様、役人様。どこですか、ここに入るのを見ました」
そこに戻ってくるトッド。この女が、自分達の悪行を知っている。当然、殺さねば。いつも通りに。
「あら、どこかで会ったかしら?」
気の狂った乞食女の言うことなど耳も貸さず、彼は女の喉を掻き切り、奈落の底へ送りました。いつも通りに。

そしてすぐに現れたのが……手紙を読んだ、ターピン判事。
遂に、遂にこの時がやって来ました。彼を椅子に座らせて、トッドは言います。彼女はアナタのしつけが効いたみたいです。アナタの事ばかり話していますよ。アナタと結婚するそうです。
上機嫌のターピンは、髭を剃りましょうというトッドの申し出を快く受け入れ、再びトッドと歌います。
「これほど気の合う男は初めてだ」
この世の春といった表情のターピンに、トッドはこう言います。
「ええ、女の好みまで一緒とは」
ようやく何かおかしいと気付いたターピン。
「老けたせいもあるだろうが、どうやら理髪師の顔など覚えていないらしい……」
「……ベンジャミン・バーカー……!」

ですが、もう遅い。その銀細工の剃刀が、仇の喉を切り裂きます。天井まで届くほど血液が飛び散らせ、彼は奈落の底へ……。

彼の復讐は成りました。しかし、それを隠れて見ていた者がひとり。
そう、トッドの……ベンジャミンの実の娘。ジョアナ。
しかし、『トッド』はそれに気付くことができません。逃避行の為、身をやつしているから? それもあったでしょう。

でも、違うのです。

家族を愛したベンジャミン・バーカーは、とうに死んでいた。
そこには、復讐の為に復讐をする悪魔、スウィーニー・トッドしかいなかったのです。
最早、愛する者の顔すらも、ハッキリとは思い出せない。
目の前に娘がいたとしても、それがどんなに母親に似ていたとしても、それが理解できないのです。
復讐に心を燃やすあまり、大切なモノすらもう分からないのです。


さあ、お前も散髪してほしいのか! そうだろう! 遠慮をするな! 無理矢理彼女を椅子に座らせるトッドですが……そこで地下から聞こえたラベットの悲鳴。「今見たことは忘れろ!」と言い残し地下へ。
せ、セーフ! セーーーーーーーフ!

……いや、アウトです。

地下のラベットは、特に何か身体的ダメージを負ったとか、そういうわけじゃありませんでした。ただ判事の息がまだあって驚いただけだったとか……。
でも、トッドは気付いてしまいます。彼女が悲鳴を上げた本当の理由に。
それは、乞食の女。その見覚えのある顔、金色の髪。この乞食は、さっき何と言ったか?
「あら、どこかで会ったかしら?」
それは……かつて『ベンジャミン』が愛した自分の妻、ルーシー。
そう、ルーシーは死んでなどいなかった。毒を飲み、気が狂ったようになりながらも、生きていたのです。ついさっき、トッド自身でその手にかけるまでは。

ルーシーが、気の狂った物乞いという変わり果てた姿になっていたこと。
トッドを自分のモノにしたいラベットが、「毒を飲んだ」とだけ説明し、死んだと思わせたこと。
そしてトッドが、復讐するために復讐する悪魔と成り果て、ベンジャミンとして愛した者の顔すら思い出せなかったこと。
その全てが、この悲劇を生みました。

怒りと絶望に呑まれたトッドは、自分を騙したラベットをオーブンの中に放り込み、焼き殺します。
そして、復讐の悪魔スウィーニー・トッドは……ルーシーの遺体を抱きながら、その場に座り込み……背後から忍び寄るトビーに首を掻き切られ……その命を終えるのです。
奇しくも、彼自身が多くの血を吸わせ続けた、あの銀細工の剃刀で……。

『人を呪わば穴二つ』の本格王道復讐譚ミュージカル。
と言ってしまえば簡単ですが、この物語を立体的で複雑にしているのは、やはりトッドとラベットの関係性でしょう。
復讐にこだわるあまり、『復讐』という概念そのものに取り憑かれ、何のための復讐なのか、誰のための復讐なのか……それすらも分からなくなってしまったトッド。
一方ラベットは、彼を何度も復讐の闇から連れ出そうとします。自分の愛欲を満たすためではありましたが。
「あなた、ルーシーの顔覚えてるの?」
とは、彼女が最初に訊ねたことです。復讐など忘れ、もっと未来を見よう、新しい人生もある……しかし、復讐者本人にしてみれば、なんと陳腐な言葉でしょうか。
いえ、陳腐どころの騒ぎではありません。お店を花で飾ろうとか、海辺に引っ越そうとか。ラベットが未来の明るい話をいくら提案しようとも、トッドはただのひとつだってその話を聞いていない。つまらない、意味の無い言葉だと一蹴するどころか、彼女の言葉は届いてすらいないのです。

最後、トッドがラベットを焼殺するシーンは、おぞましくも美しい。
妻の死体を前にして、突然トッドが叫びます。「そうとも、復讐はおしまいだ、これからは未来を生きよう」
ラベットは目を輝かせます、やっと自分の言葉が通じたと。「結婚できるの?」
二人はその場でダンスを始め、共に歌い……トッドの歌声がどんどん怒りと憎しみに染まりだし……そして、オーブンにドン。焼けていくラベットを、オーブンの小窓から冷酷に眺めるトッド……。

ラベット……アンソニー……トビー……自分を慕ってくれるはずの人間なら、周りに何人もいただろうに。トッドにとって、彼らは復讐のための駒でしかなかった。
復讐だけのために生き続けた結果、周りも、本来愛していたはずの人間さえも見えなくなってしまった。
家族を愛したベンジャミン・バーカーはとうに死んでいた。
そこにいたのは、孤独な殺人鬼、スウィーニー・トッド……。

皆さんも家族と話をしましょうね、なんて教訓に結び付けるつもりは毛頭ありませんが。
心を鎖し、何も見えなくなった孤独な復讐者。ジョニー・デップの怪演、感情のこもった歌声により、その気持ちが痛いほど伝わってきます。
ミュージカル好きもホラー好きも、もちろんジョニー・デップ好きや王道復讐劇好きも楽しめます。
是非一度、ご覧になってはいかがでしょう?



……結局描写はされませんが、優男のアンソニーはきっとジョアナと一緒に遠くへ逃げたのでしょうね。王道ミュージカルなら当然そうなります。
きっとアンソニーの心の中には、少し怖い恩人の理髪師・トッドがいつまでも生き続けるんだろうな……そう思うと、余計切なくなります。
幸せになるんだぞ優男。主人公がいなくなっても主人公の大切にしてた女の子をいただいていい思いをするのはミュージカル優男の特権だからな。

それでは、次回のホメカツもお楽しみに!

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posted by 黒道蟲太郎 at 12:11| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
素晴らしいです、面白いです。
また観たくなりました。
Posted by 田中 at 2015年08月27日 01:49
アンソニーもハリポタ出てますよ!
Posted by at 2015年10月17日 14:40
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