2015年04月22日

漫画『鉄コン筋クリート』をホメる!

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さて。入院生活もじきに終わっちゃいますから、あの作品についてそろそろ触れないといけないでしょう。

漫画『鉄コン筋クリート』



松本大洋・作。1993年から1994年まで、ビッグスピリッツにて連載された作品です。全3巻。

しばらく前に『ZERO』を読んだ際、松本大洋先生の才能に茫然とせざるを得なかったこの黒道(ホメカツもしました。こちらからご覧ください)。
そんな松本先生の出世作にして代表作がコレだということで、こりゃ読まねばならんだろうと。前回の入院の際に読んだのですが……。
あまりのコトに、なんとホメていいのか分からなくなって、結局そのまま退院してしまいました。
そう、私にとってこの『鉄コン筋クリート』は、それほどまでに衝撃を受けた作品だったのです。

ハッキリ申し上げて、今もこの衝撃をきちんと言語化できる自信は無いのですが……ここを逃すとタイミングが無くなるかもしれないし、そろそろ書かせていただこうと思って、筆を執った(キーボードを執った?)次第であります。
頑張って書きますので、是非続きをご覧ください。

ここは宝町。ヤクザやチンピラ、不良が闊歩する物騒な街。
この町の上空を『とび』回る、第一級虞犯少年二人組――通称『ネコ』。それがこの物語の主人公、クロシロです。
二人とも喧嘩がめっぽう強く、スリやらカツアゲやら強盗やら、調子に乗ってる奴から金品を巻き上げることで生活しています。警察だって相手になりません。ひらりと『とんで』逃げてしまいます。
シロは時計と歌、硬貨が好きで、すごい馬鹿。そんなシロの面倒を、クロは何でも見ます。身体洗ったか? とか、歯磨いたか? とか。シロを傷つけるような奴がいれば、それこそ許しません。血を見るまでボコボコです。つよい。
クロやシロにとって、この町は自分達の庭みたいなモンです。
『俺の』宝町で調子に乗る奴は、誰も許さない――。
クロは何の疑いもなくそう思っています。

そんな宝町の様子がなんだかおかしくなりだしたのは、つい最近。
謎の組織がヤクザと組み、この町に『子供の城』という子供向けレジャーランドを建設するというのです。
古き良き宝町の風景は、再開発の波に呑まれ、どんどん変わっていきます。
そんな中で、クロとシロは、そして宝町の人間達は、どう生きていくのでしょうか。

というようなお話でして――ん、いつもならお前もっと長々とあらすじに文字数費やすだろって?
いやね、この作品、非常〜に難しいんですよ。『あらすじ』を皆さんにお伝えするのが。
というのもですね。この作品の主人公は確かにクロとシロ……もっと言えばクロの方なんですけれども、作中で様々な視点が入り乱れるんですね。もっと言うならば、主人公はクロというより、『変化していく宝町』そのものとでも言えばいいのか。

たとえば、『ネズミ』こと鈴木。彼は、宝町にすべてを教わったと言います。酒も女も煙草も博打も……彼のパーソナリティを形成する要素は、全部この宝町から貰ったもの。事件を起こし、ほとぼりが冷めるまで街に外に逃げた時も、ずっと宝町のことを考えていました。ところが、いざその愛する宝町へ戻ってみれば、自分の知っている空気とはだいぶ変わっている。より健全な方向へ。ストリップ劇場やパチンコ屋が潰れて、そこにレジャーランドが建つような……彼の気に食わない方向へ。
たとえば、鈴木の舎弟、木村。鈴木には可愛がられている彼ですが、組織全体でみれば三下とナメられ、くすぶる日々。そんな中、女との間に子どもができたことが発覚。彼は、今のままでは居られなくなってしまいました。妻と、生まれてくる子の為に、タバコもやめないと。組からは謹慎を言い渡されてしまったし、食わせるためにはもっと仕事が必要だ……。
たとえば、チンピラのチョコラ。派手なメイクに髪逆立てて、宝町は俺のものだと豪語しますが、イキがるばかりで大したコトはできません。昔なじみのホームレス・『じっちゃ』こと源六からも言われます。「お前はこの町に向いていない。田舎(青森)に帰って、おふくろさんを安心させてやれ」
その源六だって、空き瓶回収で稼いでいたのに、引き取ってくれる酒屋が無くなって困っています。再開発の波は、大なり小なり人々へ『変化』をもたらす――。

そう。宝町で暮らす彼らに共通するのは、今まさに『変化』を迫られている、ということです。ちょうどこの町が、再開発により『変化』していっているのと同じように。
この物語は、クロ個人の物語というよりも、「『変化』を迫られた宝町で暮らす、『変化』を迫られた人々の群像劇」と理解した方がよい、かも。

もちろん、その中心にいるのは、クロとシロです。
シロはすごい馬鹿で、自分では何もできない。だけど、邪悪な空気が蔓延するこの町で、何にも汚されずに生きている。
一方のクロは、じっちゃに「お前はこの町そのものだよ」と言わしめるほど、この町に染まってしまっている。何も信じず、ただ暴力だけに頼り、誰にも尻尾を振らず生きる。彼が気にかけるコトといえば、シロのコトのみ。シロを傷つけるような奴は許さないし、シロを危険に巻き込みたくもない。
一見すると、クロが一方的にシロを助けているようにも見える。でも、本当はそうじゃない。クロはシロによって、そのわずかな人間性を繋ぎ留めてもらっている。シロがいなくなってしまえば、守るものを失った自分は、ただただ闇の中へ落ちていくのみ。本当は、シロがクロを助けている。

だから、大切なモノを……シロを、そして『俺の』宝町を失っていくにつれ、クロの精神はどんどん歪んでいきます。以前よりも残忍に、純粋な闇に……そこに引き寄せられる、最悪の餓鬼『イタチ』。何もかも、誰も可もが次々と『変化』していく中で、クロはどうなってしまうのか。そこが、本作の見どころでしょう。

……そんで、なぜここまでホメカツするのが遅れたかというとですね、とにかくこの漫画、ページあたりの情報量が滅茶苦茶多いんですよ。
いや、意味をはき違えてもらっちゃ困るんですけど、『デスノート』みたいに文字数がメチャ多くて読むのが大変とかそういうことじゃないんです。むしろ台詞はそんなに多くない方じゃないかとすら思えます。情報量が多いって言うのはアレです。絵です。絵の情報量が圧倒的なんですよ。
『ZERO』の時も多少感じたんですけど、今作は『宝町』という町が舞台だから特にこの傾向が強いです。あらゆる闇を内包するカオスな宝町。そのゴチャゴチャとした様子が、圧倒的書き込みによって克明に描かれています。クロが生きる町。シロが生きる町。闇を飲み込みながら、変化していく町……。
もう、ページをめくるだけでウワッと圧倒されるんですよ。処理能力の低い私みたいなのは、目がチカチカ、頭がクラクラしちゃいます。こんな漫画があるのかと、私はもう圧倒されっ放しです。

そして、それに対してですね。台詞の方は『あえて全てを語らない』んですよ。
先日ホメカツした『カゲロウデイズ』が、国語力発展途上の小中学生向けだといたしますと。この『鉄コン筋クリート』は、文脈から書いてある以上の情報をきちんと読み取れる人向け。小さい子どもに見せても、ちょっと難しい話かもしれない……まぁこれ、少年誌とかに掲載されてる作品じゃないですからね別に。ターゲットが違う。
エンタメ作品においては、ハッキリすべてを明らかにしない姿勢を、説明不足であるとか風呂敷を畳めてないだとか言って糾弾する向きがあります。でも、私が好みなのはこういう作品。なるべく少ない情報量で、その背後に無限の広がりを感じさせる作品です。

なんていうかな。どんないいコト言おうとしても、言葉にすれば陳腐なんですよね。

私が今書いてる記事みたいなのは、皆さんに作品の魅力が伝わらなきゃいけないわけですから、なるべくハッキリした言葉を使わなきゃいけません。対して本作では、抽象的、示唆的な台詞や言い回しが多く出てきます。
伝わりやすさという意味では、説明的な文章に軍配が上がるでしょう。それでもこういう作品は、あんまり説明しちゃダメなのかな、と私はそう思うのです。丁寧に読み解いていけば、脅威的な圧縮率で込められた登場人物の気持ち、作者の伝えたいことが徐々に展開されていく。それは時として、つらつら説明するよりも圧倒的な情報量で、人の心を動かします。そう、ひとつの芸術作品、文学のようなモノだと言ってもいいでしょう。
お陰で私、ホメる言葉を探すのにこれだけ時間をかけてしまいました。天才っていうのは、こういう漫画家先生のコトを言うのかなぁ、なんて、今はただただひれ伏すばかりであります。

一ページ一ページに圧縮された、圧倒的情報量の絵、文章。もはや暴力的と言ってもいい。
その『情報の暴力』で、変化に晒された宝町を、そして変わっていく、変わらざるを得ない人々を、孤独に沈むクロを、闇の中でも変わらないシロを……読者を殴るように描いていく、紛れもない傑作であります。
私の無知ゆえに取り上げてるのが今になったわけであって、今更と思う方も多いでしょうが、まだの皆さんには是非触れて、この衝撃を体験していただきたいと思います。



気になった方は、是非こちらからどうぞ。



Kindle版もついでに紹介しちゃいます。
いや、『時砂の王』で初めて電子書籍触れたんですけど、便利ですね。先入観から利用には慎重な姿勢だったんですけど、今後はもっと利用していこうと思います。
それでは、次回のホメカツをお楽しみに!

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posted by 黒道蟲太郎 at 14:48| Comment(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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